流しで皿洗いをしていたエミナが、店の食器類を厨房に下げてきたミーカンに声をかけた。
「お母さんたちどう?」
「ん。まだお茶してるみたい。延々とくちゃべってるわよ。ソーコおばさんが来た時はいつも夜更かしなのよね〜、お母さん」
「んもぅ……買出しで朝早いのになぁ。ミーカンもいちおう早起きしてね」
「あたし、食材の目利きなんてできないもん。それに魚河岸とかって、おねーちゃんやあたしが行っても、仲買人のおじさんたちにナメられるのがオチだよぅ」
ミーカンは腕捲りすると姉の横に並んで皿洗いを手伝いはじめた。
「なんかね、あのお姫様が、あまり遅くなるとご迷惑だから、そろそろおいとましましょうって云ってたんだけどぉ、そしたらお母さんがウチに泊まれって。ホテル代もったいないから」
エミナは呆れた。
「ホテル代もったいないって……相手は貴族なのに」
「マリィさまってかわいいよねー。いいなぁ。かわいくてお金持ちで貴族のお姫様だなんて」
ミーカンは心底羨ましそうに云った。すくなくともマリィの立場であれば、己の人生の選択肢がより自由なのではないか? 天真爛漫な少女にはそう思えるのだ。持てる者と持たざる者の意識の乖離などには想像がおよばない。しかもそれは、ごくごく一面的な観念であるにすぎぬというのに。
ミーカンには夢があった。姉にだけは心に秘めた夢を打ち明けている。
「あたしね、劇作家になりたいの。素敵な物語を書いて、みんなを感動させたいの」
幼い頃から母の手ほどきでひととおりの読み書き算術は学んでいた。とある日、母に連れられて行った観劇で、芝居の面白さにすっかり魅せられたミーカンは、以後、街の図書館に通いつめて古今の物語を読み耽った。古い書物を読むために、難解なバーテリッド文字も独学で修めつつあったほどだ。帝都ニーブレンは識字率の高い地域ではあったが、デクル・シューレ(帝国公用語)のみならず、バーテリッド文字をも解読できる者など、高等教育を受けた者でもないかぎりそうはおるまい。
すっかり本の虫と化したミーカンが特に感銘を受け、せっせとためた小遣いをはたいて初めて買い求めた本が、史学者にして文豪たるライディオス博士の著作、『星海見聞録』の翻訳書であった。もちろん、彼女の座右の書となっている。
「いっぺん原書で読んでみたいなぁ。レウベーニ学士院の図書館には、ほかにもライディオスの書いた本がごまんと収蔵されてるんだって! う〜ワクワクするよね。ああ、行ってみたいよぅ……」
そのレウベーニ学士院は、遥かマーレンヴィーア銀河のポネル・ラーム共和国、そのさらに辺境宙域パルタディール星系にあるという。ここニーブレンからは、一二〇〇万光年ちかくも離れている。烈姫カスーネに啓示を与えたことで知られる伝説的な賢者マージョリィの創始よると伝えられ、知恵と学問、医薬、芸術、音楽、工匠をつかさどる十五主柱神の一神パルタディールの大神殿がたつ、コルトナイドの最高学府である。かつて、ライディオス博士やエリーズ・アリキ博士など、枚挙に遑がないほど高名な碩儒たちをあまた輩出してきた叡智の殿堂だ。太古の旧世界文明の一端を今に受け継ぎ、営々と人類が集積してきた膨大な知識が眠るといわれるレウベーニ学士院は、ミーカンの知的好奇心をかきたててやむことがなかった。
「劇作家になるためには、もっともっと勉強しなきゃ。そのために、いつかレウベーニ学士院に行きたいの。……でも、庶民のあたしなんかじゃ……まぁ、夢なんだけどねっ。夢見るだけならタダだし」
照れくさがって茶化すミーカンであったが、そのひたむきな願望の強さは、エミナにはよく分かった。
「夢はいつかかなうものなの。諦めなければ、ね。自分を信じて頑張りなよ」
そう妹を励ましつつ、エミナは自問せずにはいられなかった。
(あたしの夢ってなんだろう……)
母は店を継ぐことを望むのだろうか? いや、あの母ならば、自分の行きたい道を行けと背中を押すだろう。エミナの思惟は、いつしか想い人の上へと飛んでいた。
(エルベートさん……)
彼は、仲間たちからその名で呼ばれていた。おしのびの貴族なら、或いは偽名かもしれない。
たぶん、あの人は帝国騎士に違いない――ヘッドバンドを巻いていたので、額に刻印されているであろうレンゼスの紋章は確認できなかったが。逞しい長身、端正で誠実そうな顔立ち。さりげない仕草にも、町方の男たちにはない洗練された涼やかさがただよう。
(進士科を受験してみようかしら……な〜んて、まさかね)
進士科とは、連合帝国高等官僚資格試験制度の通称である。国中の秀才たちが、倍率数万倍という狭き門を目指して夙夜切磋琢磨しているのだ。凡庸な自分など、物の数ではあるまい。
そもそも、内苑に就職口を見つければ彼のそばで働けるかもしれない、なにか心ときめくアバンチュールが待ちうけているかもしれない、等という発想自体、子供の夢想じみている。否、恋する乙女の妄想か。
(はぁ〜。凹むなぁ)
エミナは溜め息をついた。あの人の顔が無性に見たい。今度、いつ店に来るのだろう。
「どしたの? おねーちゃん。皿洗い、もうできちゃったよ?」
ミーカンが訝しげに顔を覗きこんでいる。
「ん。ちょっと疲れちゃった。――ゴミ出してくるね」
「夜中に生ゴミだすと野良猫に漁られるよー。ご近所迷惑だよ」
「ちゃんとフタ支っとくからだいじょうぶ」
エミナは生ゴミ満載の木桶を、んしょ! と持って、勝手口から裏路地へ出ようとした。その時、勝手口のドアを外から叩く者がいた。あまり大きな音をたてないよう気を遣いつつ、それでいてせいているようなノックの仕方だった。エミナとミーカンは顔を見合わせた。
「誰だろう? こんな夜中に」
犯罪者の巣窟と恐れられるディーザ街城や、浮浪者や難民があふれるニーブレン星系外縁部の都市星などと違い、このソレル街城は治安がよく人情もよい。民家に強盗に押し入ろうなどという不埒者は、そうそうおるものではない。が、女ばかりの所帯のことでもあり、戸締り用心は緊要である。エミナは竈の薪を手に取ると、忍び足で勝手口に近寄った。ミーカンは不安そうに、胸の前で手をよじりあわせている。
戸外の者は、エミナが戸口に近付く気配を察知したようだった。
「夜分遅く申し訳ない。私はシムクといいます。いくたびか、《兎爆弾》亭に来店しておる者ですが」
シムク? その名は確かに聞き覚えがある。
「……こちらはお勝手口です。店の入口は表通りのほうですよ。と、云いますか、ええと、今日はもう店じまいしましたけど。申し訳ありませんが、また明日おいでください、お客様」
「……その声、エミナさん……でしょう?」
「……はい。あたしはエミナですけど……」
相手は自分のことを知っているらしい。
「連れが怪我をして難渋しております。ソレルにはほかに知り人とてなく、ご迷惑とは存ずるが、こちらを頼らせていただきました。どうかお力添え願いたい」
「お連れの方が怪我を?」
「はい。連れはエルベートと申します。貴店の常連客なので、或いは御存知なのではありますまいか?」
「え? え!? エルベートさんっ!?」
エミナは慌てて閂をはずし、木戸を開けた。確かに見覚えのある男が、何やら深刻な表情でエミナを見詰めている。
「あ……きゃぁ!」
エミナは悲鳴をあげかけて、慌てて口をおさえた。その男の衣服が血まみれであることに気付いたのだ。
「驚かせてしまってすみません。が、一刻を争うのです」
「あ、あの、エルベートさんは?」
「こっちだ」
シムクとは別の誰かが応えた。エミナの見覚えのない若者が、誰かの腕を肩にまわして支えている。その支えられている男こそ、どうやらエルベートであるらしかった。
「きみがエミナ嬢だね。僕は彼――エルベートの友人だ。ちょっと喧嘩沙汰に巻き込まれてね。彼が刺されてしまったんだ。怪我がひどいんで、医者を呼んで手当てしたいんだが……詳細は後で話す。とりあえず、家に入れてもらえまいか?」
「は、はいっ! どうぞお入りください」
「ありがとう、エミナ嬢。ご迷惑をおかけする」
「おねーちゃん……」
「ミーカン! 早くお母さん呼んできて!」
「何かあったのかしら?」
夕食後の茶席。更けゆく夜も忘れて、マリィたちがなごやかに団欒の時を過ごしていたところ、かなり動顛した様子のミーカンがまろぶように部屋に飛び込んできて、カスーネをひっぱっていってしまった。
やがて、一五分ほどたった頃、困惑した顔つきでカスーネが戻ってきた。ソーコ夫人が訊いた。
「どうかなさったの? カスーネちゃん」
「中座いたしました不調法、おゆるしください。マリィ姫様、折り入って願いの筋がございます」
「わたくしに? はい。あらたまって何でしょう?」
「お馬車をお借りしたいのです。――知人が大怪我をしまして、お医者様を呼びにいきたいのです。ここから最寄りの病院まで、ちょっと距離があるものですから」
「まぁ。ばあや、すぐに馬車の手配を」
「かしこまりました。若君はどういたしましょう? 道すがら、ホテルまで送らせますか?」
幼いカールはだいぶん前に眠くなってぐずりだし、今は客間のベッドを借りて夢への旅路だ。
「ウチは全然かまわないから」
「ではひいさまと若君をお願いするわ、カスーネちゃん」
ソーコ夫人が部屋から出ていった。
「……あ、あの」
マリィがちょっと逡巡して、それから意を決したように申し出た。
「なにかわたくしにできることはありますか? ……実は、多少ですが外科医術をかじったことがございます」
カスーネはちょっと意外そうにマリィを見た。
「医術を?」
「騎士の娘ですもの。銃後の婦女子の心得として、亡き母より仕込まれました。――と、申しましても応急のことしかできませんが」
「それは願ってもないことですよ、お姫様。ささ、どうぞこちらへいらしてくださいな」
カスーネに連れられて行ったところは、マリィたちが夕食をとった《兎爆弾》亭の店舗であった。客の誰も居ない店内に長椅子が置かれ、そこに一人の男が俯せに寝かされている。長椅子を取り囲むようにして二人の長身の男と、カスーネの娘たちがいた。
桃色の髪の少女――姉のエミナのほうだろう――はかなり取り乱した様子がありありで、床にぺたりと座りこみ、ベソをかきながら長椅子の怪我人に必死に話しかけている。
「死なないで……死なないで……死なないで……死んじゃイヤぁ〜〜」
蒼白な肌に玉の汗。背中がかすかに上下して、なんとか余喘を保っている。が、その背中には、くさび型をした両刃の短剣が突き刺さったままになって、血がにじんでいた。バゼラードと呼ばれる短剣だろう。
マリィは血を見た瞬間、軽い眩暈を覚えてたちつくす。
エミナがしゃくりあげながら、おもむろに短剣の柄へ手を伸ばした。マリィはハッとなってとめた。
「だめよ! 下手に抜いてはだめ! 出血がひどくなります」
その場の人々の視線がマリィに集まった。
「あ、あれ? マリィ・レーゼンテ男爵令嬢??」
一方の男が、素っ頓狂な声をあげた。
「何故貴女がここに?」
マリィは面食らって瞬いた。記憶の糸を手繰り寄せる。時と場所と状況が、そんなはずはないという先入観の壁を厚くし、顔と名前の符号の一致をてこずらせた。マリィの声が震えた。
「ま、ま、まさか、あなた様は……」
ユーキは人差し指を立てて、唇にあててみせた。
「今、僕の名を云ってはいけない。……分かるね?」
「は、はい。――で、では、お怪我をされた方というのは」
「エルベートだ」
チクショウ……チクショウ……ミスった! あとちょっとで手が届いたのに!
悔しさと我が身の不甲斐なさに胸が張り裂けそうだ。父母と兄の顔が心に浮かぶ。
(ごめん……)
衝きあげてくる想いを抑え損ねる。知らず、熱いものが頬をつたう。しかし今、もろもろの情念に心をゆだねているいとまなど彼女にはないのだ。隻腕となった左手で涙をぬぐう。
(早くこの都市星からフケなきゃ)
経験浅い少女ながらも、ユーミとてイルティーバ戦士のはしくれだ。その戦士の勘がひっきりなしに警鐘を鳴らす。
帝国宮廷の要人、ユーキ・アーファン・ゼルティア子爵暗殺未遂――この事件がさしまねくであろう作用には、いかな未熟なユーミとて思いを馳せずにはいられない。警察当局の追捕以上に警戒すべきは、あの光禄卿テック伯爵の一味であろう。口封じにユーミを始末するくらいのことは平然としてのけるに違いない。ユーミの胸中においてそれは、確信というより確認である。
(あんな狸親爺にやられてたまるか)
ユーミは背後からのしかかってくるような灰色の予感に駆りたてられるまま、歩を進める。が、急く心とは裏腹に足取りは重い。さもあろう、失血がひどかったのだ。応急的に止血はした。残る魔力をふりしぼって灼熱の火焔球を生み、右腕の傷口を瞬時に焼いて炭化させたのだ。が、その時の激痛たるや、ほとんど発狂せんばかりのものであった。ちょっとでも気を抜くと、意識がすぅっと奈落の深淵に引きずりこまれそうになる。常人であればとうに失神しはてていたことだろう。今、ユーミの意識を繋ぎとめ得ていたものは、彼女の強靭で切実な生への希求にほかならなかった。
(俺はまだくたばるわけにゃいかないんだ)
これからどうするか。性急に高飛びしようとすれば必ず捕縛される。ユーミは帝国の警察力を甘く見てはいなかった。しばらくソレル街城でじっと潜伏しているのが最も安全な選択かもしれない。しかしグズグズしていれば、ランザーヌにいる部族の生き残りたちに帝国の手が伸びるだろう。仇敵を前にした自分がいかに冷静さを欠いていたか思い知り、ユーミは臍を噬んだ。
いつしか辺りには大きな倉庫が建ち並んでいた。潮の香りが鼻をくすぐる。港へ出たようだ。
桟橋には何隻かの帆船が舫いでいた。埠頭に並ぶ瀟洒な街灯、そのオレンジ色の光を受けて、屹立する檣や掛け渡されたロープのシルエットが闇の中に浮かびあがる。たぶん、なんの変哲もない普通の帆船だ。
(航宙艇でもありゃ、かっぱらって宇宙に行けるのにな)
そんなものが、おいそれと繋留されているはずもない。
遥か天空の彼方では亜空間さえも自在に航行する船が往来する時代であったが、そうした古代遺産の力を享受できるのは、ごくごく限られた人々である。大多数の民草にとっては、天翔ける魔法船などそれこそ雲の上の話でしかない。
確かこのソレル街城の中軸宇宙港は南洋上空の成層圏に浮かんでいて、そこに至るには洋上の人工島から聳え立つ軌道昇降塔から移動せねばならぬ。当然、敵の網が張られていることだろう。
不意に、腹の虫が鳴った。ユーミは苦笑した。緊張の連続で空腹を忘れていたが、体は正直だ。背負いサックの中から悪戦苦闘して固焼きパンを取り出す。利き腕の右腕を斬り落とされ、慣れていないこともあるが、やはり片腕というのは不自由だ。
樽の積まれた一角の物陰に腰をおろし、パンをほおばる。今後どう行動するにしても、腹が減っては戦ができぬ、だ。ユーミは思案した。
(金はある。ランザーヌには使いを頼むとして、当分ニーブレンでほとぼりが冷めるのを待つか……)
ニーブレンは一兆人の人口をかかえる巨大な空間都市だ。潜伏は比較的たやすいだろう。
(やっぱ問題はソレルから離れることかな)
唐突に長い金髪の美少女の顔が脳裏に浮かんだ。
(もし何か困ったことがあって、それでわたくしたちに出来ることがあったら、屋敷に訪ねていらして。きっとよ)
マリィは別れ際にそう云っていた。手紙を送ってソレルに迎えを寄越してもらおうか?――そんな考えがよぎる。
(いや、ダメだ! あの子たちを巻きこんじゃいけない)
「よぉ、お嬢ちゃん♪ こんなとこでメシかい?」
親しい仲間への挨拶のような気安さでいきなり声をかけられ、ユーミの鼓動は跳ね上がった。辺りに人気などなかった。
「いやいやいや、捜しちまったぜ。水臭せェじゃねーか。黙っていなくなるなんてよ。云っただろうが。このオレ様から逃げんのは、けっこう骨が折れるんだ。なぁ、ククククク」
ジャリっと靴が砂を噛む音がした。倉庫街の路地の向こう、眠そうな眼をした総髪の剣士が立っていて、イヤったらしい微笑を口辺にただよわせている。
(くっ)
魔力をほとんど使い果たし、右腕を失い、疲労困憊著しい今の状態で、このユーアーサを斥けることができるか。
(仕掛けてくる時、かならず隙ができる)
起死回生の機は、その時をおいてほかにない。所謂、対の先。ユーミは臍下丹田へ気をこめた。気の鬩ぎ合い。微動だにせぬ両者。が、じつはごく僅かずつ、互いに左へ廻り込んでいる。正中線にぴたりと擬されたユーアーサの剣。あの、赤い刀身をもつ妖剣ではなかった。しかしなおその剣気は、ユーミの闘気を圧し、抉るように貫いてくる。精神をどんどん掘削されるような鋭さだ。凝集し、研ぎ澄まされた剣気と闘気が、間合いの接触点で火花を散らす。
(耐えろ……耐えなきゃ、死ぬ)
そのような思考をする余地があるということ自体、ユーミの不調を物語る。戦士が真価を発揮する時、闘争本能に心身をゆだねて至る没我の境地は、意思の介在などゆるさぬものだ。
(誘ってみるか? いや、そんな生易しい相手じゃない)
動けない。動けば即斬られる。が、ユーアーサもまたユーミの決死を察して、間合いに入れずにいた。二人の時が止まった。
……一刻。……二刻。時はゆっくりと移ろう。水平線が白みはじめた。
(……目が……翳む)
いつしかユーミは肩で息をしていた。手が震える。はたからは一見ただ睨み合っているだけに見えても、実力が拮抗する武術の達人同士のこと。その気の角逐は、想像を絶するほどの消耗を当事者たちの心身に強いる。体力で劣るユーミにはかなり不利であるといえた。まして彼女は今、まともに闘えるような状態ではない。
――限界が近い。
暁光がさしそめてきた。眩しさに目がくらむ。
(!?)
ユーアーサがいない。視野の端をかすめる剣の光。考えるよりも早く、四肢の筋肉が反応した。横に跳びつつ、上体を捻るようにして貫き手。瞬間、意識が白熱の光につつまれる錯覚。そして動から静へ。彫像のように静止する二人。ユーアーサがニヤリと笑った。
「やってくれたな」
ユーミのまっすぐに伸びた左手人差し指が、ユーアーサの右目に突き刺さっていた。血が涙のように頬をつたい落ちた。
「だが、惜しかった。脳にゃ届いてないぜ」
「……」
「あばよ。お嬢ちゃん」
ユーミの肩口から胸を斜めに走った裂創が血を噴いた。光を失った焦点の合わない瞳。後ろに数歩よろめいたユーミは、埠頭から足を踏み外し、海に転落した。高らかにあがる水飛沫。再び凪いだ海面を取り戻そうとするそこに、もやもやと赤いものが広がって、やがて拡散して元の紺碧となる。
ユーアーサはしばらくそのたぷたぷと揺らぐ海面を見詰めていたが、やがて踵を返した。
「さて、帰ってマールズに報告報告。あ〜めんどくせェ。慰労金でも貰わにゃ割りにあわねェぞこりゃ」
魔海銀河
蒼海銀河
雪華大星雲
水晶星雲
マーレンヴィーア銀河
光海銀河
闇海銀河
――これら七つの巨大銀河と百余の矮小銀河から形成される、半径およそ一〇〇〇万光年の時空。天文学的にはグレンゼルト超銀河団に属しながらも、他の銀河集団とはあまりに懸絶があり、故にコルトナイド局部銀河群の名をもって人類に呼び做されてきた世界。さよう、広大無辺な宇宙からすれば、ごくささやかなこの時空こそ、人類にとっては世界のすべてなのである。それはすなわち歴史の揺籃。あまたの国々が興亡を繰り広げてきた舞台。コルトナイド、別名《七銀河世界》。
もっとも、七大銀河系のうち、光海と闇海、かつて雄大な円盤銀河であったふたつの銀河系は衝突寸前で、互いの潮汐力によって形状を変化させ、細長い腕によって手を繋ぎ合っているように観測される。なん億年かの星霜を閲して、いずれ七銀河は六銀河となるのであろう。この《魔王の尻尾》とも称される潮汐腕の存在によって、光海と闇海をひとつの銀河と見做し、《光と闇の海》と呼ぶ天文学者もいた。
このコルトナイドを三次元的にかなりの精度で再現した立体幻影世界儀が、広間の中央に浮かび上っている。ただの世界儀ではない。ゼラン連合帝国が、ひそかにコルトナイドじゅうに配置した――つまり帝国版図のみならず、仮想敵国の領宙までをも網羅する時空観測魔工天体から、常時送信されてくる情報を元に、幻影は刻々と更新されるのだ。エステルド・オーヴの立体天翔図と原理は同じで、いわば世界天翔図とも云うべきものだ。
ここは内苑、総兵統帥府の太保殿。とある執務室。帝国軍に将領あまたありといえども、太保殿に執務室をかまえることを許されるのは、節刀か元帥杖を賜った者のみである。
世界儀の真正面、大人が百人も乗れそうなほど巨大な執務卓の奥に白髪の堂々たる体格の老人が座して、卓上の書類に羽根ペンを走らせている。この執務室の主らしきその人物は、書き物に余念ない様子と見えた。
執務卓をはさんで老人の反対がわに、ユーキ・アーファン・ゼルティアが直立不動で立っていた。常日頃のいかにも暢気な面差しはずいぶん影をひそめ、めずらしく悄然とうなだれている。
彼等二人のほかには、老人の左右にそれぞれ壮年の男が立ち、執務卓の横にはもう一人別の男。また、ユーキの前をさかんに行ったり来たりして歩き回る男が一人。なにやら大官然とした老人の秘書や副官たちかというと、そうでもなさそうだ。彼等はいずれも黄金に輝く肩章や飾り紐のついた立派な軍服を身にまとい、純白のマントを付けて、多くの勲章を胸にぶらさげていた。そして、全員の額にレンゼスの紋章。皆いちように渋面である。
「さて、ゼルティア少将。貴官は作戦待機中であるにもかかわらず、部下の諫言をしりぞけ、私事にて城下への密行をおこなったと聞く。さよう相違ないか?」
ユーキの前を行ったり来たりしていた男が、まず口火を切った。ユーキの直属の上官にあたる、ルディオローナ鎮守府長官、カエディ・ラ・ヴェンド大将である。
「はい。相違ございません」
「で、こたびの騒動に巻き込まれたというわけだな」
「はい」
「……言い訳はあるのかね? あらば聞こう」
執務卓の横で腕組みしていた男が、静かに問い質した。こちらは大本営幕僚総監、アロウキャード大将。
「ございません」
「まったく……公私混同はなはだしいと云わざるをえぬ。貴官の軽率な行動で、皇帝陛下の騎士をあたら犬死させるところであったわ。猛省せよ!」
カエディ・ラ・ヴェンド大将は老人に向きなおる。
「元帥閣下、部下の失態は上官たるそれがしの監督不行き届き。どうか譴責はそれがしに下されませ」
ヴェンド大将が、執務卓の奥の老人に深々と頭を垂れた。老人に代わって、右側に控えていた男、宇宙艦隊総参謀長、ユーイ・ティ大将が云った。
「宇宙艦隊総司令部としては、軍規に照らして本件を処断するのみだ、カエディ殿。それ以上でもそれ以下でもない。我等の軍法は厳正にして中立である。宮廷、ましてや後宮の意向など反映いたさぬ」
「それは、いかにもそうであろうが」
老人の左側にいた宇宙艦隊司令副長官、ネーム大将がユーキに向かって宣告した。
「ユーキ・アーファン・ゼルティア少将。そなたをノイザー方面艦隊総司令官職より解任いたす。なにしろ事が事であるだけに、内部処理ではすまされん。朝堂の歴々にも諮らねばならぬゆえ、正式な処分は後日申し渡すであろう。それまで私邸にて謹慎しておれ」
「はッ!」
ユーキが敬礼した。
「心得に申し聞かすが、古風の振舞いは却って不忠であるぞ。聊爾はまかりならぬ」
ネーム大将の言葉は、ユーキが不名誉を恥じて自決することを暗に誡めたものだが、これを聞いて老人が初めて書き物の手を止め、老眼鏡をずらしてユーキを見た。
「この子は自裁などするタマではないよ。のぅ? 子爵殿下。ほっほっほっほっほ」
老人の名はアーサー・クラウデュース侯爵。宇宙艦隊司令長官にして帝国元帥。生ける軍神と畏怖されるゼラン随一の名将である。
ユーキをさがらせた後、クラウデュース元帥府では善後策を講ずるべく協議が続けられた。
「通例であれば誡告が妥当なところであるが、そうすんなりとはいくまいな。一悶着覚悟したほうがいいだろう」
ユーイ・ティ大将が髭をなでながら所見を述べた。
「例のフィアンナ・アーネゼル皇女殿下との御婚約うんぬんの話か」
「うむ。そのことがあるからな。ゼルティア子爵殿下を追い落とす好機とばかり、後宮のさる御方などは策動あそばされようて」
ネーム大将が首をふって歎息した。
「烏滸の沙汰だな。牝鶏晨するは亡国の兆しであるという。まったくその通りだ。つまらぬ政争で、未来の帝国軍を背負って立つ将器を失うわけにはいかん。……そこで、だ。子爵殿下をしばらく辺境に赴任させてはどうだろうか? 彼は不世出の軍事的天才かもしれんが、あまりにも政治を――否、世間を知らぬ。今の帝都においておくのは危なっかしい」
ユーイ・ティ大将とアロウキャード大将が肯いて賛意を表した。
「そうだな。どなたの顰に傚ったものやら、放浪癖までお持ちときた。しばらく辺境にておとなしくしていてもらおう」
「めずらしく悄気ておったな、子爵殿下」
「たまにはいい薬であろう。若者は成功よりも失敗からより多くの経験を得るのだ」
「さて、任地はどこがよいかな?」
「されば、アゼール鎮守府はどうだろう。セッツナー長官は良識ある穏健な人物だし、あそこにはローズ・セファート中将もおられる。かの老提督ならば、よき亀鑑となられよう」
「蒼海か。かの宇宙は賊焔由々しきものありと聞く。海賊退治に働いてもらうか」
「カエディ殿は如何おぼしめさる。子爵殿下は今のところそこもとの麾下にあるが」
「異存はない。……が、正直云うと、アクアガルト進攻作戦をひかえた今、ゼルティア少将を更迭されるのは、ルディオローナ鎮守府としてはかなり痛いな。まぁ、ゼルティア少将のためだ。やむをえまい」
「よし。兵部省への根回しはそれがしにお任せ願いたい」
「よしなに頼む、アロウキャード総監」
四大将に協議をゆだねて黙考するやに見えたクラウデュース元帥が、いきなり呵々大笑した。
「ほっほっほっほっほ――しかし何じゃな、皆なんのかの申しても、やはり子爵殿下のことが可愛いんじゃのぅ」
「我等宇宙艦隊のホープですからな。それに……子爵殿下の亡き祖父君、さきの大元帥皇将使、リューネイズ親王殿下の御恩顧を忘却つかまつることはできますまい」
「なつかしき御名を聞くものかな。故リューネイズ親王殿下は、元帥閣下らと刎頚の交わりを結んだ朋友同士であられたとか」
リューネイズ親王とクラウデュース元帥。他にベルア・ガストリア大公、セートレード元帥、ローズ・セファート中将――彼等五人の将星は、百年以上の昔、エタール三世帝の御代、帝国全域に蜂起した黒旗党の大乱を平定するのに大功あった英雄たちである。
老元帥は世界儀を見た。世界儀を通して、どこか遠くを見るような目であった。
「さよう。出自こそ違えど儂ら五人は無二の友であった。――よっこらしょ。さて、そろそろ上がるとするかの」
クラウデュース元帥が立ちあがる。大将たちが元帥に敬礼した。
「以前から申しておる通り、儂は明日より一週間、休暇をいただく。忙しいところ恐縮じゃ。登庁はいたさぬが、何かあれば秘書官アルク校尉に連絡してもらいたい。総参謀長、副長官、後を頼む」
貴妃ロゼリーヌへの目通りのため、謁見の間へと続く回廊を進むテック伯爵。そこは、カールリート五世の寵妃ロゼリーヌ・ベールトリアのために、後宮敷地内に造営されたベールトリア宮殿。
(……はて、この香りは?)
テック伯は立ち止まって鼻に皺をよせた。
ロゼリーヌは聞香をことのほか嗜み、お抱えの商人らを東奔西走させては、金に糸目をつけず沈香やら白檀やら珍奇な舶来の香木を買い求めていると聞く。ベールトリア宮殿において貴妃が在宮のおりには、四六時中惜しげもなく名香が薫き込められるといわれ、宮殿を訪う者に、貴妃の在宮をしらしめる有力な手段ともなっていたほどであった。
テック伯とて宮内庁の総括を任ぜられるほどの者であるから、教養として香を聞きわけるくらいはする。鼻から脳髄へじわんと広がって沁みてゆくような甘美なその香り。意識が融けて、原初の海を揺蕩っているかのような錯覚を呼び起こす。
(……御禁制の《夢幻香》ではあるまいか?)
それは、嫌悪とともに想起されるおそるべき麻薬の名である。さる非合法組織の資金源であるとも云われる。もっとも、非合法とはいえ、その名は決して公に語られることはない。
コルトナイド諸国の政府首脳たちに忌み嫌われる秘密結社、魔道師ギルド――《焚書坑魔》によって迫害されしいたげられし者どもの怨嗟が、世界に孕ませた歴史の暗黒ともいえる知られざる巨大組織。その全貌はまったくもって謎のヴェールにつつまれている。
(……まさか、な)
やがて謁見の間に達すると、扉の前に控えた小姓に取次ぎを命じた。しばらく待つと、謁見の間ではなく居間まで進むようにとの貴妃の御諚である。
ロゼリーヌは眉目よき若者を好んで身辺に侍らせるので、ベールトリア宮殿の小姓はいずれも選りすぐりの美少年と評判である。作法も行き届いた小姓は、丁重にテック伯を案内した。
居間では、寝椅子に自堕落な姿勢でながまったロゼリーヌが、愛用の水煙管をもちいて喫煙していた。物憂げでアンニュイな風情。
ロゼリーヌの周りには三人の美容師たちがいて、一人は彼女の髪を梳り、あとの二人は彼女の手足の爪にマニキュアやペディキュアをほどこしているところだった。
貴婦人のかくもあけすけなプライベートの姿を正視するのは憚られる。テック伯はあまり貴妃の姿を視野に入れぬよう目をふせて控えた。
「ゼルティア子爵が城下にて曲者に襲われたそうじゃな」
ロゼリーヌが前触れもなく切りだした。
「……お人払いを」
「痛いっ! ええい、さがりゃ!」
ロゼリーヌが不意に身を起こしたため、鼈甲櫛が髪にひっかかったものとみえる。ロゼリーヌの叱責に、髪を梳っていた美容師は蒼白になって震えあがり、他の美容師たちともども平謝りにそそくさと退出した。ちょっとした粗相から癇癪持ちの女主人の逆鱗に触れ、鞭打ちや果ては手討ちになった使用人も数多いのだ。
「それで? ゼルティア子爵は健在というではないか。……しくじったのかえ?」
テック伯は無言で頭をさげた。
「伯ほどの知恵者ともあろう方が不覚よの。ずいぶん大言壮語しておられたが、口ほどにもないではないか」
「これは手厳しい。さりながら、策はここからが要諦なのです。真の謀略とはシエルティグ将棋のごときものでしてな。数手、いやさ数十手先を見越して駒をさす。一見無意の手に見えたとて、それは次の展開への布石であるのですよ」
「能書きはたくさんじゃ。その策とやらを聞かせい」
「貴妃さまにもお働きいただかねばなりません。まずはお耳を拝借」
テック伯はロゼリーヌの耳に顔を寄せると、しばしの間、何事か囁いた。聞くうち、ロゼリーヌの秀麗な眉間にみるみる皺が寄った。
「な、なんじゃと!? 皇帝陛下にゼルティア子爵をとりなせとな!? わらわにか!?」
「貴妃さま、お静かに」
「気でもふれたか伯爵。それでは利敵行為ではないかや」
「兵部省はこたびの事件を重く見、ゼルティア子爵を辺境警備へ転任させる意向のようです」
「けっこうなことではないか。めざわりな男がひとり、京師からいなくなる」
「彼を辺境にやっては手出しが難しくなります。それに蒼海や雪華には、かの黒旗党の乱のみぎり、ゼルティア子爵の祖父、リューネイズ親王に恩顧を受けた諸侯が多いのです。辺境でおおいに力をつけられては厄介だ」
「では、なんといたすのか?」
「陛下にそれとなく奏聞されませ。このように申し上げるのです。――ゼルティア子爵歳若くして粗忽の段あり、こたび宸襟を悩ませ奉るは罪万死に値するといえども、ひとたび帷幄にありてはかりごとをめぐらせなば、数千光年に勝ちを決する戦上手。ゆくゆく陛下の聖業を輔弼する功臣となられましょう。このたびの不祥事は瑣末でありますゆえ、大度をもってこれを不問に付し、子爵に汚名挽回の機会をお与えになっては如何でしょう。さすれば子爵は天恩優渥に感じ、ながく朝家の屏障となりて忠を尽くされるに相違ありませぬ」
ロゼリーヌは気の進まぬ様子で首をかしげた。
「汚名挽回の機会とは?」
テック伯が得たりと口の端をつりあげた。
「そこでございます。子爵を予定通りアクアガルト王国への遠征軍に加えるよう進言していただきたい」
湖に浮かぶ小船には麦藁帽子をかぶった三人の釣り人がいて、湖水に竿さしていた。晴れ渡った蒼穹には鳶が一匹、鳴きながら旋廻している。
「さっきのクーヴァは大物じゃったのぅ」
「うん。惜しかった」
クーヴァは外苑北半球のこの地域のみに生息する淡水魚である。釣り人のあいだで幻の魚とも云われる稀少種で、その魚肉は香ばしく美味である。
「儂はの、クーヴァの塩焼きで一盞やるのがこたえられんのじゃ。最近では技巧を凝らした宮廷料理などより、こうした野趣あふれる素朴な料理のほうがいいと思うようになってきたよ。ほっほっほっほっほ」
「では性根を入れて釣るがよい、クラウデュース。秘蔵の美酒を持参しておるゆえな。儂などもう四匹も釣れたぞ」
「うぬぅ。おぬしにゃ負けぬよ、セートレード」
大柄な老人と小柄な老人が和気藹々と釣りに興じている。小船の舳のほうで釣り糸を垂らしていた学者のような風貌の片眼鏡の男がふりむいて笑った。
「ははははは――さすがは百年来の戦友同士、息がぴったりですねぇ」
「亜相、おぬしも頑張って釣れ」
「はいはい、ご老体」
森深い湖畔の汀にて、焚火を囲んで腰を下ろす杣人か農夫といった風情の好々爺たちの正体を知ったら、誰もがたまげてひっくり返るに違いない。小柄な老人は帝国元帥にして宇宙軍軍令部総長、グリンステール・セートレード侯爵。大柄な老人はこれまた帝国元帥にして宇宙艦隊司令長官、アーサー・クラウデュース侯爵。そして片眼鏡の男は帝国副宰相、カスパー・レグルス選帝公である。
木の枝で串刺しにして炙ったクーヴァに齧りつき、木盃で酒を酌み交す三人。
「ここのクーヴァは味がよいの」
「森が豊かじゃからな。水も魚も美味くなる道理じゃて」
保水力の高い落葉樹の大森林。そこに水源をもつ清流がおおく流れ込むこの湖水は、滋養に富むのだ。
「さて、亜相」
頃や良しと見たセートレード侯が、本題に入った。
「はい?」
「今日、この年寄り二人をお誘いくだすったのは、いかなる存念かのぅ?」
「……では単刀直入に申し上げましょうか。帝室の長老がたは、ゼルティア子爵殿下を摂政に立てようと動いておいでですが、私は来年頭の選帝公会議にて、第八皇子アルフレッド殿下を皇太子に推挙いたす心算です」
「ほほぅ。それはまた大事じゃな」
「ゼルティア子爵殿下とフィアンナ皇女殿下との御婚約については、賛同するにやぶさかでない。ただし条件がありますがねぇ」
「……」
「ゼルティア子爵殿下に臣籍に降りていただく。これが条件です。すでに幾つか断絶した名家や跡目なき家門の選考に着手しております。ターディン伯爵家かナグラス伯爵家が、猶子入りの有力な候補となるでありましょう」
「準備のよいことよ。なかなか油断のならぬ御仁じゃな」
「天下の名軍師にお褒めいただくとは光栄ですねぇ」
「して、儂ら二人に同心せよと申されるのか?」
レグルス公は莞爾と笑った。
〜続く〜